ライチョウの寿命
野生動物の寿命を調べることは、なかなか大変です。立山のライチョウについては、1986年より足環をつけて個体識別が可能になったことから、ある程度分かってきました。しかしながら平均寿命といった値を出すには、様々な難しい要素があります。卵のうちにオコジョなどに巣を襲われたり、長雨・豪雨などで巣が水浸しになって孵化に至らないこともあります。ヒナ・幼鳥時には、凍死や捕食者に襲われる率が高く、おそらく平均寿命は数か月にもならないと考えられます。現在分かっていることは、誕生後第1回目の冬を越すことができた個体の平均生存年数が雄も雌も約4年ということです。
ただ立山では長生きの記録が多く、雄では少なくとも13年生存した個体、雌では12年生存した個体がいました。日本のみならず世界でも、このような長寿記録は立山のライチョウだけです。長生きする個体は若干雄の方が雌より多く、これまで雄では10年以上生存したものを8個体、雌では8年以上生存したものを5個体確認しています。
捕食者たち
立山のライチョウを襲う生き物で、最も捕食圧が高いのはキツネと考えられています。捕食跡には羽毛が散乱していますが、羽軸についた噛み跡や近くに残された獣フンから、多くの場合がキツネによる被害だと推測できます。室堂平地域には1〜2番が生息しています。ライチョウと同様、冬に白く色変わりするオコジョは、高山を代表する獣です。オコジョは、ライチョウの巣を見つけて卵を持ち出したり、そのヒナや幼鳥を襲います。ハヤブサの仲間のチョウゲンボウは、高山帯にも生息域を持つ鳥ですが、近年繁殖したようで、周辺のライチョウの家族が襲われてヒナが全滅したこともあります。カラスもライチョウの巣を襲い、卵を持ち出す様子が観察されています。立山では動物の死骸や昆虫などの餌を求めて、ハシボソガラス・ハシブトガラスの両種が飛来します。
よくいわれるワシやタカの被害については、立山ではほとんど影響がないようです。イヌワシによるライチョウの捕食は、2〜3例報告されているだけで、室堂平への飛来は、ほんのわずかな回数です。また、タカの仲間は、渡りの季節に上空を通過するものが多く、立山で捕食行動をした様子はありません。